<預言の声

近代の預言 003

2015年3月15日

内村鑑三

〖殺す者は殺される〗

 軍人を(あお)って外敵を討(う)たせる者は、結局、自分がその軍人に討たれることになる。〔実際、日清戦争で(注1)〕軍人に清国(しんこく)を討たせた日本人は、過去十年間、軍人に苦しめられ、国富(こくふ)の大半を軍人を養う費用として捧げた〔ではないか〕(注2)。


よくよく考えよ。〕今、もし、同じように軍人にロシアを討たせたならば、彼ら〔軍人〕がさらに、我々〔国民〕に要求するところは、どれほどのものになろうか。

 

その時こそ、今なお我々の内に残る、僅少(わずか)の自由も憲法〔で保証された権利〕も煙となって消えしまい〔、我々のすべてを捧げることが要求されるであろう(注3)。そして〕、日本国はさながら一大兵営と化し(注4)、国民は米の代わりに硝煙しょうえん、注5)を食らい、麦の代わりにサーベルを刈るに至るであろう(注6)

  

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(内村鑑三「殺す者は殺さる」『万朝報』1903〔明治36〕年9月29日を現代語化、〔 〕内は補足) 

                                                       

注1日清(にっしん)戦争

1894~1895(明治27~28)年。朝鮮半島の支配をめぐる日清間の戦争。

 

1894(明治27)年5月、朝鮮で政府の専制政治と日本の朝鮮進に反対する大規模な農民の反乱(甲午〔こうご〕農民戦争、東学〔とうがく〕の乱)が起こると、これを機に、朝鮮支配の強化を狙う日清両国が出兵した。同年7月末、ついに日清両軍は衝突した。

 

同年8月1日、日本は清国に宣戦を布告した。宣戦布告の中で日本は、「〔この戦争は、〕朝鮮の独立を助け、東洋の平和を守るため」の戦争であると称した。

 

近代的に組織化された日本軍は、海陸で清軍を圧倒し、中国山東省の北洋艦隊の基地の港・威海衛(いかいえい)を攻撃し、全滅させた。戦争は本の勝利に終わり、日本は朝鮮への独占的支配を確立し、また遼東(りょうとう)半島を手がかりに中国東北部(満州)進出の機会を得た。 

 

戦後、日本は帝国主義列強の一員としての道を突き進んだ。

 

(参考文献:『もういちど読む 山川 日本史』山川出版2009年、『詳説日本史研究』山川出版2008年、『世界史B 用語集』山川出版2008年)

 

注2 一大兵営

兵営国家を意味する。

 

注3 煙硝(えんしょう)

有煙(ゆうえん)火薬のこと。

爆発すると黒煙が出る。清涼な鋭い塩味がある。

 

注4 サーベル

軍人が腰に下げた西洋風の刀剣のこと。 

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