<信仰入門

キリスト教入門 002

2015年1月20日

矢内原忠雄

 

〖イエスの生涯②〗

目 次


1.あとがき

2.はしがき

3.イエスの誕生と少年時代

4.伝道の開始

5.ガリラヤおよび異邦伝道

6.ユダおよびサマリア伝道

7.最後の入京

8.十字架と復活

3イエスの誕生と少年時代(つづき)

 

P6

 

 〔その後、〕ユダヤ人の律法の定めにしたがって、両親は8日目に、みどり児をイエスと名付けた。さらに出産に関する清めの期間が過ぎたとき、〔初子を神に献げるため、両親は〕みどり児を連れてエルサレムの神殿に上り、鳩〔の雛〕2羽を献げて初詣でをした。このような場合、小羊を献げるのが普通であったが、貧しくて小羊に手が届かない者のために鳩で代用する便法が認められていた〔のである〕。したがって、ヨセフ夫婦が鳩を献げたことは、彼らが豊かな身分ではなかったことを示すものであった〔ルカ2:22~24参照〕。


 宮詣でを終えて、彼らは〔自分たちの町〕ナザレに帰った。幼児は大きく強く成長し、知恵に満ち、神の恵みがその上にあった〔ルカ2:39、40参照〕。


 〔イエスの〕両親は毎年、「過越祭」には、エルサレムに上った。「過越祭」とは、昔、イスラエル民族がエジプトの〔奴隷の〕地を脱出して、約束の地カナンに向けて移動を開始した記念の祭りであって、ユダヤ人にとって最も重要な祭日であり、全国から〔人々が〕エルサレムに上って神殿に参拝する慣例であった。


 イエスは、12歳の時〔に初めて〕、両親と共にこの祭りのために上京した。〔祭りの期間が終わって〕両親が帰途についたとき、〔イエスは〕なお神殿に残り、〔律法の〕教師たちの間に座って、〔彼らの〕話を聞いたり、質問したりしていた。〔帰途、イエスがいないことに気づき、〕心配して捜しながら〔エルサレムに〕引き返した両親に向かって、イエスは言った。「なぜ、わたしをお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずだと知らなかったのですか。」〔ルカ2:42~49参照〕


 ユダヤ人の少年は、〕12歳にな〔り、戒律の儀式を終え〕れば、〔毎年、過越祭、五旬節、仮庵祭の三大巡礼祭に参加する義務を果たすなど、〕律法のもとに全責任を負う一人前の男であると認められた。いわば、元服の年である。


 この年齢に達したイエスに、神を「自分の父」と呼び、神の神殿を「父の家」と呼ぶ、〔神と自分の関係についての〕ある特別な宗教的自覚の萌芽が現れたものと思われる。〔このとき、〕イエスは、ヨセフにしたがってナザレに帰ることよりも、神殿にとどまって〔神の〕教えを聞くことこそ、自分の本来の居場所であることを感じた〔のである〕。


 それでもイエスは、両親と一緒にナザレ〔の村〕に帰り、〔日々の仕事をしながら、〕従順に両親に仕えた。こうして、イエスは知恵も背丈もますます増し、神と人に愛されつつ成人した〔ルカ2:51~52参照〕。 

 

P7

 

 父ヨセフは〔、イエスがごく幼少の頃に〕早く世を去った〔もの〕と思われ、これ以後、私たちはヨセフの名を福音書の中に見ることはない。イエスはおそらく、父の職業を継ぎ、自ら指物大工〔の仕事〕をして、母と弟妹〔たち〕を養ったのであろう。しかし、これは〔あくまでも〕私たちの想像にとどまり、〔新約〕聖書は、イエスの12歳から30歳までの18年間については、全く沈黙している。


 〔しかし、〕この18年は、イエスの公生涯に対する重要な準備期間であった。この期間にイエスが神の心を学んだ道は、おそらく、次の三つであろう。


 第一は、聖書(旧約聖書)である。イエスは聖書をよく読み、そのことばを記憶し、その生きた精神をよくつかんでいた。イエスの戦いは、〔何よりも〕聖書による戦いであった。〔そして、〕その素養は、この18年の沈黙の期間に積まれたのである。


 第二は、自然である。イエスの多くの教えは例え話の形で語られ、これらの例え話は、自然界の事物の引用に満ちている。空を飛ぶ一羽の鳥、野に咲く一茎の花も、彼の高き教えの材料となっている。彼の豊富な自然観察もまた、彼に神の真理をさとらせる貴重な準備の一つであった。


 第三は、労働である。イエスは父亡き後、自ら労働し、家族を扶養したと思われる。その他、彼が農業、漁業、家庭の労働などについて知識と興味を持っていたことが、彼の例え話によく表れている。そして、額に汗する労働こそが、神の心を学ぶ最善の道なのである。


 このように、庶民の子イエスは、最も庶民的に、その30年の生涯をナザレの田舎町で〔人知れず〕過ごした。〔彼は隠された生活と平凡さの中に生きたのであり、〕そこには何の見栄(ば)えもなく、取り立てて言うべき事件は何も起こらなかったのである。

 

 

♢ ♢ ♢ ♢

 

続く(「伝道の開始」へ)

 

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