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紹介・書評 007

2017年5月30日改訂

内容紹介

宮田光雄

山上の説教から憲法九条へ

-平和構築のキリスト教倫理-

 

新教出版社、2017年5月3日刊、B6判・258項・本体1,800円

§ § § §

戦争をしたくなければ平和の準備をせよ(K.バルト)

九条は有効である!

 

比類なき知識と洞察、そして信仰を持つ政治学者である著者が、山上の説教についての聖書学的解釈と、兵役拒否や非暴力抵抗運動をめぐる実践的議論とを往還(おうかん)しながら、来たるべき神の国の《しるし》として地上に平和を実現する責務を、キリスト者こそは負っていると説く。

 

内容紹介:

聖書釈義から説き起こし、広大な思想史的考察を経て、憲法九条に基づく防衛戦略構想に及ぶ、4論文を収録。

 

イエスの徹底した平和の福音が政治学的にも現実的妥当性をもつという驚くべきメッセージ。

 

朝鮮半島の危機や南シナ海の情勢が取り沙汰され、憲法改正の企図が強まる中、キリスト教的立場からいかなる応答が可能かを示す、今こそ必読の書。


【目次より】

 

1 「右の頬を打たれたら左の頬をも向けよ」

-《山上の説教》と平和構築の倫理-

 1 論争の中の《山上の説教》

 2 《山上の説教》と責任倫理

 3 《山上の説教》と現代の平和構築

 4 《主の祈り》を生きる

 

2 兵役拒否のキリスト教精神史

 1 イエスと兵役拒否

 2 古代教会の兵役拒否

 3 中世教会と宗教改革の正戦論

 4 平和主義セクトの兵役拒否

 5 現代の世界教会と兵役拒否

 

3 近代日本のキリスト教非戦論

-内村鑑三の思想と系譜-

 1 義戦論から非戦論へ

 2 非戦論の展開

 3 非戦論と再臨思想

 4 非戦論と兵役拒否

 5 非戦論の継承

 

4 非武装市民抵抗の構想

-日本国憲法九条の防衛戦略-

 1 非武装による防衛構想

 2 市民的抵抗の諸形態

 3 市民的抵抗とデモクラシー

 4 《草の根》からの市民運動

 

§ § § §

 

イエスは、まったく新しい創造的な愛敵(あいてき)の行動を命ずる。

すなわち、コンフリクト(注1)を回避するのでなく、それを自覚的に-だだし別の政策選択(オルタナティブ)の仕方で-担(にな)いとっていくというのである。

 

(中略)

 

イエスの説く非暴力は、そうした敵対者にたいする挑発的な働きかけにほかならない。

攻撃-報復という悪循環を一方的に断ち切るとき、そこに生ずるショック効果によって、敵対者の行動=態度の変革が引き起こされることを期待するのである。

 

悪に手向かってはならない」という戒(いまし)めは、むしろ、パウロ的に「善をもって悪に勝ちなさい」(ローマ書 12章21節)と言いあらわすほうが、いっそう正確であろう。

(宮田光雄『山上の説教から憲法九条へ』より。『出版社通信』新教出版社 2017年5月号、「編集部から」記事)

 

注1 コンフリクト(conflict)

[con(共に) flict(衝突する)] 「衝突」、「対立」、「矛盾」、「葛藤」などの意味がある。

 

♢ ♢ ♢ ♢

 

著者みやた・みつお氏は、1928年、高知県に生まれる。

東大法学部卒業。東北大学名誉教授。政治学、ヨーロッパ政治思想史専攻。

 

長年、学生聖書研究会を主宰して伝道に献身し、自宅内に学寮(一麦寮)を建てて信仰に基づく共同生活を指導してきた。

 

主著:

『西ドイツの精神構造』(学士院賞)、『政治と宗教倫理』『ナチ・ドイツの精神構造』『現代日本の民主主義』(吉野作造賞)、『非武装国民抵抗の思想』『キリスト教と笑い』、『ナチ・ドイツと言語』『聖書の信仰』全7巻、『ホロコースト以後を生きる』『国家と宗教』(以上、岩波書店)、

『宮田光雄思想史論集』全8巻(創文社より刊行中)、『十字架とハーケンクロイツ』『権威と服従』『ボンヘッファーとその時代』『《放蕩息子》の精神史』

『私の聖書物語』(新教出版社)ほか多数。

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