<聖書学・新約ギリシャ語

聖書学 002

旧約聖書学

2016年3月16日改訂

タケサトカズオ

 

神名ヤハウェエホバについて

1.神名ヤハウェ(Yahweh)について

ヤハウェは、旧約聖書におけるイスラエルの神の固有名の日本語訳。「ウェ」、「ヴェ」とも表記される。

 

この神名は、モーセに啓示された(出エジプト記3:1~15)。

 

この神名は、ヘブライ語では4つの子音字YHWH(神聖四字)であらわされる。

その意味は、「わたしは、『わたしはある』という者である(わたしは、有って有る者である)」(I AM WHO I AM)または、「わたしは、わたしであろうとする者である」(I am what I will be)であると考えられている。

 

今日の旧約聖書学によると、YHWHの発音として、ヤハウェ(Yahweh)が最も信憑(しんぴょう)性が高いとされる。一方、かつて用いられたエホバ(Jehovah)は、誤訳である。

 

神名YHWHの日本語訳は、岩波訳『旧約聖書』(1998年)では「ヤハウェ」、関根正雄訳『旧約聖書』(1997年)では「ヤヴェ」としている。

また、日本聖書協会の口語訳『聖書』(1954年)および新共同訳『聖書』(1987年)では、ユダヤ教以来の伝統に即して、「主(しゅ)」としている。

なお、文語訳聖書(明治元訳、1887年)では、「エホバ」としていた。

 

2.エホバ(Jehovah)について

第二神殿時代以降の古代イスラエル人は、第三戒などに基づき、神聖な神名YHWHを口にすることを敬遠し、聖書を朗読する際にも、アドナイ(ADONAI、「わたしの主」という意味)と読み替えた。

 

そして、この読み替えを忘れないように、時々、YHWHにADONAI(アドナイ)の母音を添えて書いた(字外音標)

 

やがて、この神名YHWHの元来の発音は、忘れ去られてしまった。

 

その後ヘブライ語研究の未発達なヨーロッパ中世の時代(おそらく16世紀)に、ⅰ 上記(2)-② (YHWH+ADONAIの母音)をもとにして、ⅱ 神名YHWHとADONAI(アドナイ)の二つの言葉を誤って一つの言葉として読もうとして、ⅲ YHWHにADONAIの母音( ‐a,o,a)を当てて(ただし、ヘブライ文字のYには文法上、弱母音の‐aはつけられないため、代わりに曖昧母音のeをつけて)、Yehowahという合成語が作られ、ⅳ さらにYehowahのYとJ、WとVを入れ替えて、 Jehovah(エホバ)という合成語が作られた。

 

しかし、このような合成語は、歴史的(旧約・新約聖書の時代)には実在しない。以上から明らかなように、YehowahJehovah(エホバ)は、旧約聖書の神名YHWHの誤用である。

 

♢ ♢ ♢ ♢

(参考文献:浅野順一編『キリスト教概論』創文社、1966年。p21~23。『旧約新約 聖書大事典』教文館、1989年、p1207。N・Tライト『クリスチャンであるとは』あめんどう、2015年、p97~101。W.ブルッゲマン『旧約聖書神学用語辞典』日本キリスト教団出版局、2015年、p494~497)

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