聖書に学ぶ 018

2022年5月16日改訂

原著:藤井 武

現代語化:タケサト・カズオ

詩篇研究

虐げられる者の叫び⑵

詩篇 第10篇

 

Psalm study

Cry of the oppressed ⑵

Psalm 10

 

Takeshi Fujii

虐げられる者の叫び〗 ⑴  

* * * *

 

虐げられる者の叫び⑵

詩篇第10篇

(改訳)

1.〔神〕ヤハヴェよ、なにゆえ遠く離れて立ち、
 困窮
(なやみ)の時に、姿を隠されるのですか。


2.悪しき者は高ぶり、苦しむ者をひどく痛めつける。
 自ら企
(くわだ)てた謀略(はかりごと)に彼らが捕(と)らえられますように。

3.じつに悪しき者は、自らの野望を誇り、

 貪欲な者はヤハヴェを棄(す)てて侮(あなど)る。


4.悪しき者は高ぶって言う、「神は追及しない。神などいない」と。これが、彼の思いのすべてである。

5.彼の道は常に栄える。

 あなたの審判(さばき)は彼から高く離れている。彼はすべての敵を吹き倒す。


6.彼はその心の中で言う、わたしは動かされない。わたしは代々、

 災いに遭(あ)うことはない、と。

7.その口は呪詛(のろい)と欺きと暴虐(しいたげ)に満ち、

 その舌のかげには禍害(わざわい)と邪悪(よこしま)がある。

8.彼は村里の待ち伏せ場に座り、
 陰密の場所で罪なき者を殺す。


9.彼は茂みに潜む獅子(しし)のように隠れて待ち伏せする。

 苦しむ者を捕らえるために待ち伏せし、網にかけて苦しむ者を捕らえる。


10.彼はうずくまり、彼はかがんで、その爪に寄る辺なき者は陥(おちい)る。

11.彼はその心の中で言う、「神は忘れているのだ。そのみ顔を隠し、永遠にご覧にならない」と。

12.ヤハヴェよ、起(た)ち上がって下さい。神よ、聖手(みて)を上げてください。

 苦しむ者たちを忘れないでください。


13.なにゆえ、悪しき者は神を侮り、心の中で言うのか。

 あなたは追及しない、と。  

14.あなたは禍害(わざわい)と憂愁(うれい)をしかと見ておられる、
 これを眼に留めて、聖手
(みて)によって報(むく)いるために。
寄る辺なき者はあなたに身を委ねる。
 あなたは孤児
(みなしご)の助け手となられる。

15.不法な悪しき者の腕を折ってください。
    彼の悪を追及してください、もはや何一つ残らなくなるまでに。

16.ヤハヴェこそ、代々とこしえに王。
 諸国民は、その地から滅び失せた。

​17.苦しむ者たちの願いを、ヤハヴェよ、あなたは聴いてくださった。
 あなたは彼らの心を確かなものとし、耳を傾けてくださった。

18.孤児と虐げられる者のために審判(さばき)を行い、
 この地の人がふたたび、脅
(おびや)かされることがないように。

(藤井武訳を現代語化。参考資料:関根正雄訳、月本昭男訳、聖書協会共同訳)

 すべてを見ておられる神

God seeing everything


〔2-①〕                               

14.あなたは禍害(わざわい)と憂愁(うれい)をしかと見ておられる、

 これを眼に留めて、聖手(みて)によって報(むく)いるために。

寄る辺なき者はあなたに身を委ねる。

 あなたは孤児(みなしご)の助け手となられる。

〔2-①-ⅰ〕   
神は果たして、顧
(かえり)みてくださらないのか。神は果たして、お忘れになったのか。

 

一体、〕誰が知っていようか、人が神の冷淡さを恨(うら)んでいるときに、神がその者のためにいかに驚くべき配慮をなしつつあるかを。

 

神は一切を見ておられる

いかなる暗窟(あんくつ)にも深き所にも届く目によって、彼はあらゆる禍害と憂愁とを見ておられるのである。そして、ご自身の聖手によって、正しい報いを為(な)そうとされるのである。

 

これに比べれば、人の子のどのような慈愛の父であろうとも、「行きずりの他人」にも及ばない。

〔2-①-ⅱ〕 
神の性格を知る者の誰が、このことを疑うだろうか。

摂理(せつり)の歴史を見る者の、誰がこのことを否定するだろうか。

信仰の実験を持つ者の、誰がこのことを拒(こば)むだろうか。

 

それゆえに、寄る辺なき者は寄る辺なきままに、虐げられる者は虐げられるままに、いよいよ、ただ神に〔己が〕身を委ねるのである。

〔2-①-ⅲ〕 
いない孤児は神において、〔肉親の〕父にはるかに優
(まさ)る〔真の〕父を見出すのである。

 

わが子を孤児として〔地上に〕遺(のこ)してゆくすべての父よ、母よ、憂(うれ)えるな。天の父は必ず、あなたに代わって彼らを〔しかと〕見〔守っ〕てくださるであろう。

 

形に表れる結果いかんにかかわらず、ひたすら神を信ぜよ彼の聖手に〔すべてを〕委ねて、安心せよ

 

こうするとき、あなたは決して間違いをしないのだ〔から〕。

〔2-②〕  

15.不法な悪しき者の腕を折ってください。
    彼の悪を追及してください、もはや何一つ残らなくなるまでに。

16.ヤハヴェこそ、代々とこしえに王。
 諸国民は、その地から滅び失せた。

〔2-②-ⅰ〕 
ふたたび、期待は祈りにうつる。


あの怪物の鉄笏(てつしゃく、注1のような、悪しき者の〔恐るべき〕腕。それによって、寄る辺なき者〔たち〕がどれほど悩まされるか分からない。

 

しかし神の聖手(みて)が触れれば、〔その腕は〕たちまち、見る影もなく砕けるであろう。

〔2-②-ⅱ〕
神よ、これを折り、〔打ち〕砕いてください。不法な者の悪をことごとく追及し、もはやその片影〔さえ〕も残らなくなるまで、これを滅ぼしてください。

そして、われらの〔住むこの世界-〕天地を義(ぎ)の住む家としてください

 

義に飢え渇く者すべてに、この祈りが絶えるのは〔一体、〕いつの日だろうか〔マタイ 5:6参照〕。

〔2-②-ⅲ〕
そうして、われらは知る、この祈りこそ、必ず〔神に〕聴かれることを。

なぜならヤハヴェは、永遠に〔この天地・宇宙を〕統治される王だからである。

 

彼に敵対する諸国民がその地から滅び〔失せ〕るのは、当然のことである。過去の歴史は、その証人(あかしびと)である。

〔2-③〕 

​17.苦しむ者たちの願いを、ヤハヴェよ、あなたは聴いてくださった。
 あなたは彼らの心を確かなものとし、耳を傾けてくださった。

18.孤児と虐げられる者のために審判(さばき)を行い、
 この地の人がふたたび、脅
(おびや)かされることがないように。


神のみこころに適(かな)う祈りは、祈りながらすでに、聴かれたことをおもう。〔なぜなら、神に〕聴かれることが余りに、確実であるから。

 

神よ、あなたは苦しむ者たちの願いを聴いてくださった

先に彼らを虐げて自らの野望を誇った悪しき者たちは、今〔一体、〕どこにいるのか。

 

神よ、あなたは虐げられる者の心を確かなものとし、孤児の叫びにあなたの耳を傾けてくださった。あなたは正しい審判者にふさわしく、彼らのために審判(さばき)を行〔い、彼らを抑圧と暴虐から救〕ってくださった。

このゆえに彼らは今、慰められている。彼らは今、満ち足りている。

 

こうして、この地の彼ら、寄る辺なき者の心に、もはやふたたび脅威(おびやかし)はない。

 

ああ、幸いだ、柔和な者〔たち〕。かれらは確実に地を受け継いだのである〔マタイ 5:5参照〕。

♢ ♢ ♢ ♢

(原著:藤井武「虐げらるる者の叫び(詩篇 第10篇)」『旧約と新約』第93号、1928〔昭和3〕年3月。「藤井武全集 第4巻』岩波書店、1971年、150~152項を現代語化。( )〔 〕内、下線は補足)

注1 (しゃく)

朝廷の公事において礼装した官位の高い者が右手に持つ、細長い薄板。

笏01_edited.jpg

注2 詩篇研究 「虐げらるる者の叫び(詩篇第十編)

Psalm Study "Cry of the oppressed  Psalm 10"

参考までに、以下に原文の一部を引用する。

​原 文

Original text

・・・

15.なんぢ悪しきものの臂(ひじ)を折りたまへ。
    またよこしまなるものはその悪を尋ねたまへ、これあらぬやう。

16.エホバはとこしへにとはに王なり。
 諸民はその地より亡びたり。

ふたたび期待は祈りにうつる。かの怪物の鉄笏のごとき悪しき者の臂、そのために弱きものがいかばかり悩まされるかわからない。併し神の聖手がふれなば忽ち見るかげもなく砕けるであらう。


神よ、これを折りて砕きたまへ。よこしまなる者の悪を悉く尋ねて、もはやその片影ものこらぬまでに之を滅ぼしたまへ、かくて我らの天地を義の住む家と化せしめたまへ。すべて義に 飢ゑ渇くものにこの祈り何の日か絶えよう。


而して我らは知る、この祈りこそは必ず聴かれることを。何となればエホバは永遠に統(す)べたまふ王であるからである。

 

彼に敵する諸民がその地より亡びるは当然の事である。過去の歴史はその証人(あかしびと)である。

・・・

(『藤井武全集 第四巻』岩波書店、1971(昭和46)年、「詩篇研究  虐げらるる者の叫び(詩篇第十編)」、151項より引用)

 

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